おいらは森へ行って、うすぐらい、そうして枯葉が敷き詰められた格好
のトイレを見つける毎に、つくづく日本の森のありがたみを感じる。
茶の間のトイレはどうだか知らんが、森の厠は実に精神が安まるように
出来ている。
それらは必ず道端から離れて、青空の匂いや苔の匂いのして来るような
樹木の陰にあり、草むらを伝わって行くのであるが、そのうすぐらい光
線の中にうずくまって、ほんのり明るい葉っぱの反射を受けながら瞑想
に耽り、または樹幹の間のけしきを眺める気持ちは、なんとも云えない。
眼に青空や青葉の色を見ることが出来る日本の森の厠ほど、格好な場所
はあるまい。
谷崎純一郎になぞられて