おばちゃん 電車に乗る
ここはいつもは静かなところだけれど、ゴールデンウィークの間だけは人と車が溢れかえる。
かっつおぶしが切れたので買いに行きたいけど、きょうは電車で行くことにして
駅までおっちゃんが送ってくれた。
二両つなぎの普通電車は、シルバー世代でせいぜい混んでいた。
視界が開いて突然青い海が窓いっぱいに広がると、そのたびに
「わあわあ、きれいきれい。お父さん、こんな休暇の過ごし方私たちし
たことなかったね。またしようね。」
はじけた明るい声が車内アナウンスのように響く。
ワンマーカーの若い運転手さんは、
「場内進入。速度50よし…」
と、いつもより張り切っているようだった。
港町の駅で降りた。おばちゃんが料金を箱にいれながら
「ありがとうございました。」
と言って頭を下げた。運転者さんは帽子をとって、
「ありがとうございました。」
と言った。おばちゃんは、電車がカーブで消えるまで見送っていた。