削り屋さんは駅前の商店街にあった。
おばちゃんが店の前で、
「下さいな」
中年のご主人が顔を出し、
「どうぞ、お入りください。いつも、遠くからありがとうございます。」
ガラス戸の隙間から、かっつおぶしの匂いが流れ出てきた。
おばちゃんは、鰹節と利尻昆布と地元産の梅干しとお茶を買った。
「たくさん買うていただいて、持てますやろうか?」
カウンターに並べられた袋を眺めてご主人が言った。
「大丈夫よ、この子に持たせますから。」
とおばちゃんはおいらを見た。
おいらは、かっつおぶしのビニール袋を咥えて、駅まで歩いた。
かっつおぶしの袋は、
気球みたいにふわりふわりして、とても軽かった。