おばちゃんが 「百万回死んだねこ」という話をしてくれた。
そのねこは、ものすごくたくさんの人間に飼われてきた。
王様のときも海賊のときも音楽家のときもあった。飼い主はみなその死
を悲しんだけど、ねこは悲しくなかった。どうせすぐに生まれ変わるんだから。
そうして99万9999回死んでまた生まれたかわったとき、
真っ白な妙齢な雌猫に出会って恋に落ちたんだと。
それからは、人間に飼われることをやめて、家族を作って、懸命に
働いた。
月日が流れ、二匹はおばあさんとおじいさんになった。
ねこは白猫を溺愛していたので、白猫が死ぬと、嘆き悲しみ
なにも口にしなくなり、やがて死んでしまった。
そして百万回死んだねこは二度と生まれかわることはなかったと。
おいら、とっても身につまされて、ぽろりと涙こぼしそうになった。
おばちゃんにわからんように、向こうを向いたら
「ひばりもそんな恋がしたいね」
て言われてしもうた。