半島の猫30話

半島の猫30話

絵本半島の猫30話より〜

消え残った弦月を眺めていた老人が、

「ひとりで来たようだな。」

と呟き、コッペパンをちぎって立ち上がり、デッキに向かいました。
子猫はちょうど階段を昇り切ったところでした。

「ひとりか?」

老人を見上げて、子猫がニャンと答えました。

「一人でよく来た。」

と言って頭をなぜようとしますと、子猫はたちまち頭を引っ込めてしまいます。

「怖がらなくてよい。」

と手をかざしますと、また、引っ込めてしまいます。
そこで老人は宣言するような調子で言いました。

「ここに来るつもりなら、人間との正しいかかわり方を学べねばならない。
まず、お座りとおあずけだ。」

「では、お座り!」

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